【まとめ】書籍:世界経済を破綻させる23の嘘【ハジュン・チャン】

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書籍の内容を各章ごとにまとめ

書籍名:世界経済を破綻させる23の嘘

著者:ハジュン・チャン

訳者:田村源二

出版:徳間書店 

 

『はじめに』まとめ 

2008年の金融メルトダウンの後、世界経済はガタガタになりそれは今現在も続いている。 この大惨事は、1980年代行こう世界を席巻した「自由市場主義」によって作り出されたもの である。そこで唱えられている「市場に任せておけば、最も効率の良い最も公正な結果となる」 や「企業活動には最大限の自由が与えられるべきだ」などといった考えは、多くの国に取り入れ られてきたが、本当にそれで経済が良くなったのだろうか本書ではそういった自由主義の幻想 に疑問を呈していく。 

 

『第1の嘘』まとめ 

「市場は自由でないといけない」とよく言われる。これは政府が市場参加者の行動を規制する と、資源が最も効率的な利用のされ方をしなくなり、人々は投資とイノベーションへのインセン ティブを失うからだと言われている。しかし本当は自由市場などというものは存在しない。労働 者として働くにも株を売買するにも、そこには必ず守らなければならないルールがある。とすれ ば、それはもう既に自由ではなく、主観で持って定められた政治的なものになってしまっているのだ。 

 

『第2の嘘』まとめ 

「株主の利益を第一に考えて企業経営せよ」とよく言われる。会社の所有者は、リスクを引き 受けている株主であるから株主の利益を最優先しなければならないというものだ。しかし、実際 は株主の利益を最優先する企業は発展しない。なぜならば株主は株を売ることでその会社とは縁 を切れるので、長期的な成長よりも短期的な自分の利益を追求し、会社にとって良くないことも させうるからだ。 

 

『第3の嘘』まとめ 

「市場経済では誰もが能力に見合う賃金をもらえる」とよく言われる。そして、富める国と貧しい国の賃金の格差を最低賃金法を導入しようとすればそれは個人の才能と努力に対する不公平 かつ非効率な報酬システムができあがると考えられている。しかしそれは間違いで、賃金格差が生 じる最大の理由は、生産性の違いではなく、移民を抑える政策のせいである。富める国の人々は 移民政策によって、安い賃金で働く人々の流入から守られているのだ。 

 

『第4の嘘』まとめ 

「インターネットは世界を根本的に変えた」とよく言われる。現代通信技術革命は、距離の消 滅をもたらし、それによってできるボーダレスな世界では旧来の考え方や習慣は無効になる。そして私たちは柔軟にその変化に対応していかねばならないという考え方だ。しかし、私たちが新し いものを革新的なものだとみなす傾向があるだけで、実際は洗濯機が社会にもたらした変化と比 べれば、それはなんともないものなのだ。すでにありふれたものになっているものを過小評価し てはならない。

 

『第5の嘘』まとめ 

「市場がうまく動くのは人間が最悪(利己的)だからだ」とよく言われる。市場は自分のことしか考えない利己的なエネルギーを巧みに利用して、社会的調和を作り出しているというものだが、それは間違っている。人が本当に利己的に動くのならば、世界中で生産性は低下し、犯罪や不正 が横行するだろう。しかし今この世界はそのようにはなっていない。 

 

『第6の嘘』まとめ 

「インフレを抑えれば経済は安定し、成長する」とよく言われる。インフレは投資を抑制し、ひいては成長が阻害されるというものだ。たしかに今日ではインフレは手なずけられたかもしれ ないが、世界経済は不安定化していまっている。裏では多くの人々の生活が破壊され、完全雇用や経済成長をめぐる問題から目をそらしてしまっているのだ。いまやインフレは金融資産保有者を利する政策を正当化するのに利用されるためのものなのだ。 

 

『第7の嘘』まとめ 

「途上国は自由市場・自由貿易によって富み栄える」とよく言われる。「今日富み栄える国は みな自由市場政策、特に世界の他の国々との自由貿易を通して富裕国になったのだ」ということ なのだが、実際は自由貿易をしていない時の方が業績が良く、さらには今の富裕国の全てが保護 貿易や補助金などを組み合わせた政策によって富を手に入れていた。自由貿易・自由市場政策に よって裕福になった国はこれまでにほとんどなく、これからもそうだといえるだろう。 

 

『第8の嘘』まとめ 

「資本にはもはや国籍はない」とよく言われる。今日では超国籍企業の台頭が著しく、その事業は国境を越えて展開され、従業員や生産・研究施設の多くも海外にある。「そのような企業を 冷遇する政策を打ち出す国は、超国籍企業からの投資を受けられなくなり、結局は経済を害する」 と言われているが、実際は超国籍企業のほとんどが国際活動を行う一国籍企業にとどまっている のだ。結局はその企業の属する国に利益の大半を持って行かれるのであり、資本の国籍を無視するのは危険なのだ。 

 

『第9の嘘』まとめ 

「世界は脱工業化時代に突入した」とよく言われる。現在では、かつて資本主義の原動力であっ た製造業は重要ではなくなり、生産性の高い知識サービスが台頭している。いまや富める国はほ とんどの人がサービス産業で働く「脱工業化の時代」なのだ。しかし、それは幻想でしかない。 国内総生産に占める製造業比率の減少は、サービス産業として価格が安くなってしまっているだけで絶対数は変わっていない。これは経済全体のバランスにとっては好ましくなく、発展途上国に とっては極めて危険なことなのである。 

 

『第10の嘘』まとめ 

「アメリカの生活水準は世界一である」とよく言われる。アメリカは1ドルで買える財・サー ビスの量が富める国の中で一番であり、生活水準は世界最高である。アメリカは自由市場政策を どの国よりもしっかりと実践しており、だから他の国もそれを模倣しようとするのだ。しかし、それはアメリカ国民を平均した時の話だ。実際は格差が大きいため、先ほど述べたことは一般国 民の生活水準を正確に表しているとは言えない。真の豊かな生活は表面的な数字を見るのではなく、余暇や雇用保障、治安などあらゆる面を見なければならないのだ。 

 

『第11の嘘』まとめ 

「アフリカは発展できない運命にある」とよく言われる。気候がひどく、地理的条件も劣悪、 周囲の市場は小さく、武力紛争もたやすく起こる。そんなアフリカは外国からの援助に頼り、なんとか忍んで行くしかないのだと。しかしアフリカはずっと停滞し続けてきたわけではない。一時期はまあまあの成長を遂げていたのである。ではなぜ発展できないのか。それは諸問題に対応 するスキルをアフリカ諸国がまだ持っていないということと、強制的に導入させられた自由市場 政策が原因である。政策を変えればアフリカは発展するのだ。 

 

『第12の嘘』まとめ 

「政府が勝たせようとする企業や産業は失敗する」とよく言われる。政府には必要となる情報 も専門知識もないため、産業政策によって勝者を選ぶことはできないのだと。しかし、実際は世 界中に政府による勝者選択の成功例を見ることができる。民間セクターによる勝者選びのみが成 功すると主張する自由市場主義に目を暗まされ続けると、政府主導あるいは官民共同による経済 発展の可能性を見逃すことになる。 

 

『第13の嘘』まとめ 

「富者をさらに富ませれば他の者たちも潤う」とよく言われる。「富者への重税などで富の創 出を邪魔しているのをやめ、富者をさらに富ませて社会に富のパイを創出することで、結果的には貧者がもらえるパイも大きくなる」という考え方だが、このトリクルダウン理論は上手くいかない。政策手段によって富者に投資をさせ、それによって促された成長から創出された富を分かち 合うというほうが得策だろう。 

 

『第14の嘘』まとめ 

「経営者への高額報酬は必要であり正当でもある」とよく言われる。才能のある人を引き止め、 会社の利益を増やすために、その報酬額がどれほど不当に見えようともそれを人為的に抑えよう とするべきではないというものだ。しかし、他の富裕国や過去のCEOに比べると今のアメリカの CEOは報酬の額が異常なことははっきりする。これは市場の原理によるものではなく彼らの強大 な経済的・政治的・思想的力によるものなのである。 

 

『第15の嘘』まとめ 

「貧しい国が発展できないのは起業家精神の欠如のせいだ」とよく言われる。「起業家精神こ そ経済を動かす原動力であり、金儲けの新たな機会を見いだす彼らがいなかったら経済は発展し ない」というものだが、実際の問題は個人レベルでの起業家精神の欠如ではなく、生産技術や社 会組織の欠如である。必要とされているのは効率の良い組織や制度を作り上げて運営する集団的 能力なのだ。 

 

『第16の嘘』まとめ 

「すべて市場に任せるべきだ」とよく言われる。「市場参加者は合理的であり、自分にとって 最良だと思う行動をとるため、変に政府が介入すれば好ましくないことが起こる」ということだ が、市場参加者は必ずしも自分が何をしているのかわかっているわけではない。私たちは限定合 理性しか持ち得ないのであって、ルールをつくって選択の自由を意図的に制限しなければ複雑な世 界すべてに対応することは不可能なのだ。 

 

『第17の嘘』まとめ 

「教育こそ繁栄の鍵だ」とよく言われる。「経済発展には教育を充分にうけた労働者が必要で、 知識経済が台頭してきた現在でそれはますます必要不可欠なものになっている」ということなの だが、実際にそれが国の繁栄に直接結びついている証拠は殆どない。教育で得られる知識の多く は生産向上には関係なく、さらには非工業化と機械化で知識自体の必要ども落ちているからだ。 本当に必要なのは、生産性の高い企業とそれを支える制度の確立なのである。 

 

『第18の嘘』まとめ 

「企業に自由にやらせるのが国全体の経済にも良い」とよく言われる。資本主義システムの中核である企業部門で、ものが生産され雇用が作られるので、企業にとって良いことは国にとっても 良いことだという考え方だ。しかし、すべての規制が企業にとって悪いわけではない。共同で使わなければならない資源や職業訓練を義務付けることなどは結果的には企業にプラスになるのだ。 重要なのは規制の量ではなく、その目的や内容である。 

 

『第19の嘘』まとめ 

「共産主義の崩壊とともに計画経済も消滅した」とよく言われる。儲ける機会をもとめる個人 と企業が市場メカニズムの中で下すっこの決定だけが複雑な現代経済を維持できるという考え方 だ。だが、市場主義経済でもかなりの部分が計画されているのではないか。どの資本主義国も研 究開発や国営企業の運営などで、経済のかなりの部分を動かしているのだ。重要なのは、計画す る云々ではなく、適切なレベルで適切な計画をどう実行していくかなのだ。

 

『第20の嘘』まとめ 

「今や努力すれば誰でも成功できる」とよく言われる。私たちは、機会が均等にあるという平 等を与えられることを望んでいる。人種差別などで優秀な頭脳が虐げられることは非効率極まりない。しかし、機会均等が与えられただけでは本当の平等とは言えないのではないだろうか。衣 食住など、最低限の結果の平等を保証されて初めて全員が真の平等な競争ができるのだ。 

 

『第21の嘘』まとめ 

「経済を発展させるには小さな政府のほうがよい」とよく言われる。 富者からの税金で貧者をも保護するという制度は、貧者をより怠け者にし、人々の富創出意欲を低減させるからだ。しかし、保証がなくて人々は安心して仕事ができるだろうか。うまく設計された社会保障制度は人々の失業不安を解消し、仕事に果敢に取り組ませ、変化を恐れさせない。大きな政府はこれによって経済を活性化させることができるのである。 

 

『第22の嘘』まとめ

「金融市場の効率化こそが国に繁栄をもたらす」とよく言われる。金融市場の急速な発展で、 資源の配分と再配分が迅速に行えるようになった。そして自由な金融市場はより速い経済発展を 促す。しかし、今日はその効率の良さがあだとなっている。金融が速く動きすぎると自体経済が 狂いはじめるのだ。問題解決のためには企業が長期発展に必要とする辛抱強い資本の獲得ができ るようあえて金融市場の効率性を落とさなければならないのではないだろうか。 

 

『第23の嘘』まとめ 

「良い経済政策の導入には経済に関する深い知識が必要」とよく言われる。「政府の政策が成 功するか否かは、それを立案、実行する者の能力に左右され、ともなれば自由市場政策をとった 方が官僚の能力も政府の役割も小さくて済むので良い」ということなのだが、実際は良い経済政 策を運営するのに優秀な経済学者は必要無い。これまでの自由市場経済学の末路を見ていればそ れがわかるだろう。しかしこれは完全に経済学はいらないと言っているわけではなく、私たちは 正しい経済学を学ばなければならないということだ。 

 

『むすび』まとめ 

私たちは世界経済を立て直さなければならない。それも気が遠くなるほどに厄介だ。現在支配 的なシステムが理にかなった信頼できるものであるといまだに信じている者たちもみるが、自由 市場経済学というものはその根本的なところである理論的仮定と実証性が極めて疑わしい。経済と社会を組み立てて運営する方法を徹底的に再検討することが今必要なのだ。 

 

書籍全体のメッセージ 

この本が私たちに伝えたいメッセージは、これまで私たちが当たり前のように受け入れてきたことを考え直してみようということだと思う。そして自分たちの利益を守り、活動的経済市民として社会に貢献できるようになるきっかけを与えたいのではないだろうか。私たちは正しい経済学を学ばなければならないのだ。 

 

自分の感想と問題点について

私はこの本を読んでいて、普段えている情報の何が正しいのかがわからなくなってしまった。これまでに本や大学で学んだことが否定されていたからだ。

 

この本に書かれていることに納得はしたが、かと言ってよく言われる一般的な論にも正しいことはあるのではないかと思った。今回この本を読んだことで、情報を鵜呑みにせず、身の回りのことも疑ってみるという視点を得られたのは すごく良かったと思う

 

私は経営学部で勉強をしているので経済などに興味があるが、世間の人たちの中にはもともと経済などに強い関心を持っていない人も多くいるのではないかと思う。強い関心がなければ情報を得ることも、現状を考え変えようとすることもない。社会を変えるといったときに、こうした興味関心を持っていない人たちに情報を届け、問題に向き合ってもらうということが必要なことであり、今後の課題(問題)なのではないかと思った。 

 

 

世界経済を破綻させる23の嘘

世界経済を破綻させる23の嘘