精神論で片付けるな!日本で起業家が育たない本当の理由

スポンサーリンク
この記事をシェアする

f:id:kawasaki283:20160513160254j:plain

日本で起業家が育たない誤った解釈

世間では日本は起業家が育ちにくいとよく言われている。そしてその理由としてよく挙げられているのが日本の若者には「チャレンジ精神が足りない」「向上心がない」と言ったことである。

 

けれどもそれはなんの根拠もない精神論である。一理あったとしてもそれだけで起業うんぬんを語るのは御門違いもはなはだしい。日本でベンチャー・ビジネスが育たない本当の理由は経営資源確保の難しさにあるのだ。

 

起業家が溢れたイギリス産業革命

かつてイギリスでは産業革命期にたくさんの起業家たちが登場した。イギリス産業革命期の起業家たちは自ら事業を起こしモノを生産し、人を雇用し、経済を発展させていったのだ。

 

ではなぜ産業革命期に多くの起業家たちがこぞって事業にのりだしたのか。それを探るとどのような環境下においてベンチャー・ビジネスが成長するのかが見えてくる。

 

起業家の出現には環境が関係する

事業を行う際に必要になるのはヒト・モノ・カネといった経営資源である。イギリス産業革命期、起業家たちはその全てを手に入れることが可能な環境下に存在した。

 

それゆえに多くの起業家が登場したのだ。

 

起業とモノ

はじめにモノであるが、事業を行う際には場所や設備が必要となる。

産業革命期の工場ははたから見ると1つの工場のように見えるが、実際には内部にたくさんの起業家たちが間借りをしていた。その工場が1つの組織であったわけではない。

この工場は貴族階級によって建てられており、その賃料もまた決して高いものではなかった。

この作業場賃貸制度によって起業家たちは低資金で比較的簡単に事業を始めることができたのだ。


貴族階級たちは事実上のベンチャーキャピタルであり、制度的にも起業家たちを助けていたと言っても良い。

 

起業とヒト

次にヒトである。イギリスには専門的仲介業者というものが存在した。彼らは起業家たちが作ったモノを一手に引き受け販売を請け負った。

そのおかげで起業家たちは市場開拓や販売に付随する業務の数々を気にする必要はなく、作れば売れるという状況であった。

この専門的仲介業者の存在はイギリス産業革命を支えた。

 

また、組織内部の人の管理に関しても起業家たちはうまい方法を考えついていた。それが、二重雇用制である。

起業家たちは事業を拡大する時、そのまま外部の人を自らの組織に組み入れるのではなく、自分の組織の下にまた別の管理者を頭とした組織をくっつけるという形をとった。

そして新たに加わった組織の管理はその組織の管理者に一任した。そうすることで組織管理の煩わしさを解消したのだ。

 

起業とカネ

最後にカネの問題であるが、これは専門的仲介業者や作業場賃貸制度によって起業家たちが小規模かつ少人数での事業運営が可能であったことで解消されている。

 

日本で起業家が育たない本当の理由

いかがだろうか、イギリス産業革命期の起業家たちの登場は決して「やる気があった」とか「チャレンジ精神旺盛だった」だとかの精神論で片付くものではなく、経営資源や環境が整っていたというしっかりとした根拠に裏打ちされたものだということがわかっただろう。

 

現在世間で言われているような「チャレンジ精神がどうたら」「向上心がどうたら」といった主張は見当違いなのだ。

 

日本で起業家たちが成長するためにはベンチャーキャピタルや政府のインフラ支援、失敗を許容する価値体系など外部環境の整備こそが最も重要な要素なのである。

 

アメリカやインドでは起業が活発

日本に起業家が少ないのに変わって、アメリカやインドでは起業が活発だ。それは、先ほどの結論である環境が整っているからに他ならない。

 

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などによるベンチャー投資が盛んであるだけでなく、特区の制定や企業に必要となるインフラの整備が行政によって積極的に行われているのだ。

 

また、起業に失敗すると敗者の烙印が押されてしまう日本と違って、失敗者への評価が肯定的になされることも大きい。

 

もし日本が起業家の育成を本当に望むのであれば、安易な精神論によって起業を語るのではなく、過去と未来・自国と他国の比較などから見える事実を積み上げて未来を語る必要がある。

 

ひとりビジネスの教科書: 自宅起業のススメ

ひとりビジネスの教科書: 自宅起業のススメ